退去時のハウスクリーニング代は払う必要ある?相場と"特約"の落とし穴を解説
退去時のハウスクリーニング代は払う必要があるのか、間取り別の相場、特約があると払う場合・無効になるケースを国交省ガイドラインに沿って解説。誰が負担するのか、交渉のしかたまで断定でまとめます。
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退去のときに「ハウスクリーニング代として2万円いただきます」と当然のように言われ、「これって私が払うのが普通なの?」とモヤッとしたことはありませんか。
引越し16回・転勤族として何度も退去を経験してきた立場から、はっきり言います。退去時のハウスクリーニング代は、契約に「特約」がなければ原則として大家(貸主)負担です。そして特約があっても、内容によっては無効になり払わなくていいケースがあります。
私自身、退去のたびに精算書のクリーニング項目を確認してきました。契約書に特約が入っている物件もあれば、入っていない物件もあり、入っていないのに「クリーニング代込みです」と口頭で言われたこともあります。知っているかどうかで、数千円〜数万円が変わるのがこの項目です。
この記事では、ハウスクリーニング代を「払う必要があるのか・ないのか」を軸に、間取り別の相場、特約が有効になる条件・無効になるケース、納得できないときの交渉手順までを、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って整理します。敷金や原状回復費全体の話とは切り分け、クリーニング代1点に絞って解説します。
📌 結論(先に書きます)
- 特約がなければ、退去時のハウスクリーニング代は原則として貸主負担
- 借主負担にするには契約書の「特約」が必要で、口約束だけでは弱い
- 特約があっても、金額が不明確・暴利的・説明がなければ無効になりうる
- 相場は間取り別でおおむね「1K=1.5〜3万円/2LDK=3〜5万円/3LDK=5〜7万円」程度(目安)
- 「通常の掃除をしていたか」も判断に影響する。退去前の自分の掃除は無駄にならない
- 金額や負担に納得できないときは、明細を出させてガイドラインを根拠に交渉できる
そもそもハウスクリーニング代は誰が払う?|原則は貸主負担
最初にいちばん大事な原則を押さえます。退去時のハウスクリーニング費用は、特約がなければ貸主(大家)が負担するのが原則です。
理由は、国土交通省のガイドラインの考え方にあります。ガイドラインでは、借主が通常の清掃(ゴミの撤去、拭き掃除、水回りの掃除など)をして退去した場合、それ以上のハウスクリーニング費用は貸主が負担するとされています。次の入居者のために業者を入れてピカピカにするのは、あくまで貸主側の都合・経営上のコストだから、というロジックです。
ガイドラインの該当する考え方を要約すると次のとおりです。
賃借人が通常の清掃を怠ったために必要となる清掃・修繕は賃借人負担となるが、賃借人が通常の清掃を行っていれば、専門業者によるハウスクリーニング費用は原則として賃貸人(貸主)の負担とされる。
ここで多くの人が誤解しているのが、「退去するんだからクリーニング代くらい当然払うもの」という思い込みです。業者クリーニングは「義務」ではなく、特約があって初めて借主の負担になる──これが出発点です。
⚠️ 「ハウスクリーニング代は当社規定です」に注意 管理会社の担当者が「うちは退去時クリーニング代をいただく規定でして」と言うことがあります。しかし「会社の規定」だけでは法的な負担根拠にはなりません。根拠は契約書の特約です。まず契約書にクリーニング特約があるかを確認してください。
カギを握る「特約」とは何か|契約書のここを見る
では、どういう場合に借主がハウスクリーニング代を払うのか。それが「特約(とくやく)」です。
特約とは、ガイドラインの原則とは別に、契約書で当事者が個別に取り決めた約束のことです。「退去時のハウスクリーニング費用は借主が負担する」という一文が契約書(または重要事項説明書)に入っていれば、それが特約です。
確認すべき場所はだいたい次のあたりです。
- 賃貸借契約書の「特約事項」「特記事項」欄
- 「原状回復・退去に関する取り決め」の条項
- 重要事項説明書の費用に関する記載
- 契約時に渡された別紙(クリーニング費用の覚書など)
💡 特約は「金額が書いてあるか」も超重要 「ハウスクリーニング費用は借主負担」とだけ書かれ、金額がどこにもないケースがあります。後述のとおり、金額が不明確な特約はトラブルになりやすく、争えば無効と判断される余地があります。契約書で「借主負担+具体的な金額(例:22,000円)」がセットで書かれているかを確認してください。
特約があれば必ず払う?|無効になる3つのケース
「特約があるなら払うしかないのか」と思うかもしれませんが、そうとは限りません。特約があっても、内容によっては無効と判断され、払わなくてよくなることがあります。
ガイドラインや過去の裁判例の考え方では、借主に通常の原状回復義務を超える負担をさせる特約が有効と認められるには、おおむね次の3つの条件をすべて満たす必要があるとされています。
借主負担の特約が有効とされる3条件(ガイドラインの考え方)
- 特約の必要性があり、かつ暴利的でないなど客観的・合理的な理由がある
- 借主が、その特約によって通常の原状回復義務を超えた負担をすることを認識している
- 借主が、その負担を負う意思表示(合意)をしている
逆に言えば、これを満たさない特約は無効になりうるということです。次のようなケースは要注意です。
無効・減額の余地があるケース
| ケース | なぜ問題か |
|---|---|
| 金額が契約書のどこにも書かれていない | 借主が「いくら負担するか」を認識・合意できていない |
| 相場とかけ離れて高額(暴利的) | 客観的・合理的な理由を欠くと判断されうる |
| 契約時に特約の説明が一切なかった | 借主が内容を認識していたといえない |
| 「クリーニング代+経年劣化の修繕費」までまとめて借主負担にしている | 経年劣化は本来貸主負担。混ぜているのは不当 |
⚠️ 「特約があるからすべて払う」ではない 特約は万能ではありません。金額が不明・高すぎる・説明がなかった、といった事情があれば、全額を払う前に内訳と根拠を確認する価値があります。「特約に書いてあるので」と言われても、その特約自体が有効かどうかは別問題です。
短期解約でクリーニング代が上乗せされるケース
最近の単身向け物件で増えているのが、「契約から1年以内の解約はクリーニング代を借主が全額負担」といった短期解約に関する特約です。
これは契約書の「短期解約違約金」「短期解約時の取り決め」などの欄に書かれていることが多く、入居期間が短いほど借主負担が重くなる仕組みです。転勤族のように短期間で退去する人ほど影響を受けやすいので、契約時に必ず確認しておきたい項目です。
ただし、この種の特約も「特約が有効とされる3条件」の対象です。金額の記載がない、説明がなかった、相場とかけ離れて高額、といった事情があれば争う余地があります。「短期だから全額負担で当然」と思い込まず、まず特約の中身と金額を確認してください。
⚠️ 契約時に短期解約条項を読んでおく 短期解約のクリーニング負担は、退去時に初めて知ると「聞いていない」となりがちです。入居前・契約時に短期解約の条項を読み、いつまでに退去すると負担が増えるのかを把握しておくと、退去のタイミングを調整できることもあります。
自分でクリーニング業者を手配するのはアリか
「貸主指定の業者が高い。自分で安い業者を頼んで済ませたい」と考える人もいます。結論から言うと、特約で貸主が業者を手配する取り決めなら、自分で別業者を入れても特約上の費用は請求されうるため、原則は自己手配でクリーニング代を回避することはできません。
理由は、特約は「貸主(または貸主指定業者)がクリーニングを行い、その費用を借主が負担する」という形が多いからです。自分で別の業者に頼んでも、貸主側がもう一度クリーニングを入れれば二重コストになりかねません。
一方で、特約そのものがない物件なら、そもそも業者クリーニング代は原則貸主負担です。この場合は自分で念入りに通常清掃をしておけば、追加請求を防ぐ材料になります。自分でどこまで掃除すればいいかは退去前の掃除はどこまで自分でやる?で線引きを解説しています。
ハウスクリーニング代の相場|間取り別の目安
「そもそも提示された金額は妥当なのか」を判断するために、相場の目安を知っておきましょう。ハウスクリーニング代は間取り(広さ)と作業範囲でおおよそ決まります。
ただし、地域・物件・業者・汚れ具合によって金額は大きく変わります。以下はあくまで一般的な目安であり、実際の金額はこれと異なる場合があります。
間取り別のハウスクリーニング費用の目安
| 間取り | 費用の目安(参考) | 主な作業範囲 |
|---|---|---|
| 1R・1K | 1.5〜3万円程度 | 水回り・床・キッチン・換気扇 |
| 1DK・1LDK | 2.5〜4万円程度 | 上記+居室の追加分 |
| 2DK・2LDK | 3〜5万円程度 | 部屋数増加・水回り複数 |
| 3DK・3LDK | 5〜7万円程度 | 全室+水回り一式 |
| 4LDK以上 | 7万円〜 | 広さに応じて加算 |
💡 エアコン洗浄・浴室乾燥などは別料金のことが多い 上の目安は「室内のハウスクリーニング一式」のおおよそです。エアコン内部の分解洗浄(1台1〜2万円程度)、浴室・レンジフードの特別洗浄などは、基本料金とは別に加算されるのが一般的です。明細で「一式」とだけ書かれているときは、何が含まれているのかを確認しましょう。
提示された金額がこの相場を大きく超えている場合は、内訳と根拠を求める十分な理由になります。特に「1Kなのにクリーニング代5万円」のような請求は、内容を精査すべきサインです。
退去前に自分で掃除する意味はある?|結論:ある
「どうせ業者が入るなら、自分で掃除しても無駄では?」とよく聞かれます。結論、退去前の掃除には意味があります。
理由は2つあります。
1つ目は、「通常の清掃を行っていたか」が負担判断に影響するからです。前述のとおり、借主が通常の掃除を怠った結果として余計に必要になった清掃・除去(こびりついた油汚れ、放置したカビなど)は、借主負担になりえます。普段から掃除をしていた・退去前に最低限きれいにした、という状態は、不当な追加請求を防ぐ材料になります。
2つ目は、立会いでの心証と交渉のしやすさです。明らかに掃除をしていない部屋では「これは借主さんの管理の問題ですね」と言われやすく、逆にきれいにしてあれば「経年劣化は貸主負担ですよね」と主張しやすくなります。
退去前にやっておくと得する掃除チェックリスト
- キッチンの油汚れ・コンロ周りを拭き取る
- レンジフード(換気扇)の表面の油を落とす
- 浴室・洗面所の水垢・カビを落とす(放置カビは借主負担になりやすい)
- トイレの掃除
- 窓・サッシのレールのゴミを除去する
- 床の拭き掃除・髪の毛やホコリの除去
- ベランダのゴミ・落ち葉の除去
- 私物・ゴミを完全に撤去する(残置物は別途処分費を請求されうる)
⚠️ 「自分で掃除したから業者クリーニング代はいらない」とは限らない 特約で業者クリーニングが定められている場合、自分で掃除をしても特約上の費用は請求されることがあります。自分の掃除は「不当な追加請求を防ぐ」ためのもの、と整理しておくと混乱しません。
退去精算書のここを確認する|ハウスクリーニング項目の見方
退去後に届く精算書(または立会い時の見積書)で、ハウスクリーニング項目を確認するポイントです。
確認すべき5点
- 契約書の特約と一致しているか(特約がないのにクリーニング代が計上されていないか)
- 金額が特約の記載どおりか(特約に書かれた額より高くないか)
- 間取りの相場と比べて妥当か(相場を大きく超えていないか)
- 「一式」でなく内訳があるか(何の作業にいくらかかっているか)
- 経年劣化の修繕費がクリーニング代に紛れ込んでいないか(クロス張り替え等は別問題)
💡 「クリーニング一式 ◯万円」は内訳を求めてよい 「ハウスクリーニング一式」とだけ書かれた請求は、内訳の提示を求めて問題ありません。品目・作業範囲・単価が分からなければ、妥当性を判断できないからです。記録の残るメールや書面で求めるのがコツです。
立会い当日に精算書へサインを求められても、納得できない項目があればその場で署名せず「持ち帰って確認します」で構いません。立会いそのものの注意点は退去立会いの注意点で詳しくまとめています。
納得できないときの交渉手順|段階を踏む
ハウスクリーニング代の負担や金額に納得できないときは、黙って払う必要はありません。いきなり訴訟ではなく段階を踏むのが正解です。
交渉の流れ
- 特約の有無と内容を契約書で確認する 特約がなければ「原則貸主負担では」と確認できる
- 明細(内訳)の提出を求める 品目・作業範囲・金額を書面で出させる
- ガイドラインを根拠に書面・メールで異議を伝える 「通常清掃はしており、特約も金額の記載がない」など記録の残る形で
- 消費生活センターに相談する(局番なし:188) 無料で助言・あっせんしてくれる
- 少額訴訟を検討する 60万円以下の金銭請求に使え、原則1回の審理で判決。費用は数千円程度
クリーニング代は敷金から差し引かれる形で精算されることが多いので、敷金が思ったより返ってこないと感じたら、その内訳にクリーニング代がどう計上されているかを必ず確認してください。敷金が返ってこないときの具体的な交渉手順は敷金が返ってこない時の交渉手順に、原状回復費全体の負担区分は原状回復費用の相場と負担の線引きにまとめています。あわせて読むと、精算書を1項目ずつ精査できるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q. 契約書に「ハウスクリーニング代 借主負担」とだけあり金額がありません。払うべき?
A. 特約はあるものの金額の記載がないケースです。金額が不明確な特約は、借主が「いくら負担するか」を認識・合意できていないとして、争えば無効・減額の余地があります。請求された金額が相場どおりか確認し、高すぎる場合は内訳と根拠を求めてください。最終的な有効性の判断はケースによるため、不安な場合は消費生活センター(188)に相談しましょう。
Q. 特約がないのにクリーニング代を請求されました。
A. 特約がなければ、通常清掃をして退去した場合のハウスクリーニング費用は原則として貸主負担です。「契約書に特約が見当たらないのですが、負担の根拠を教えてください」と書面・メールで確認してください。根拠が示せない請求に応じる必要はありません。
Q. 自分で念入りに掃除すれば、クリーニング代は払わなくて済みますか?
A. 特約で業者クリーニングが定められている場合は、自分で掃除をしても特約上の費用を請求されることがあります。ただし、通常の掃除をしていた事実は「掃除を怠った分の追加請求」を防ぐ材料になります。掃除は無駄ではありませんが、特約の有無は別に確認してください。
Q. ハウスクリーニング代と一緒にクロス(壁紙)の張り替え費用も請求されました。
A. クロスの日焼けや家具跡などの経年劣化・通常損耗は、原則として貸主負担です。クリーニング代に経年劣化の修繕費が紛れ込んでいないか、項目を分けて確認してください。負担区分の詳細は原状回復費用の相場と負担の線引きで解説しています。
Q. 立会いでその場でサインを求められました。
A. 納得できない項目があれば、その場で署名せず「持ち帰って確認します」で問題ありません。署名は「金額に合意した」証拠になり、後からの交渉が不利になります。詳しくは退去立会いの注意点をご覧ください。
まとめ|「特約があるか・妥当か」で判断する
退去時のハウスクリーニング代は、「払うのが当たり前」ではありません。
- 特約がなければ、原則として貸主(大家)負担
- 借主負担にするには契約書の特約が必要で、口約束だけでは弱い
- 特約があっても、金額が不明確・暴利的・説明がなければ無効・減額の余地がある
- 相場は間取り別の目安(1K=1.5〜3万円/2LDK=3〜5万円/3LDK=5〜7万円程度)と照らす
- 退去前の通常清掃は、不当な追加請求を防ぐ意味で価値がある
- 納得できなければ明細を出させ、ガイドラインを根拠に交渉できる
引越しを16回繰り返してきた経験から言えるのは、退去精算で損をするのは「言われたまま払った人」だということです。クリーニング代を提示されたら、まず「契約書に特約はあるか」「金額は相場どおりか」の2点を確認するところから始めてください。
クリーニング代は退去費用全体の一部にすぎません。原状回復・鍵交換まで含めた退去費用の総額が間取り別にいくらかは退去費用の相場を間取り別に総まとめで確認できます。退去全体の流れは退去〜入居 完全ロードマップにまとめています。退去前に不用品を片づけておくと立会いもスムーズなので、あわせて読んでみてください。
📎 退去前に大型家具・家電の処分で困っている場合
退去前後は冷蔵庫・洗濯機・ベッドなど大型品が一気に出ます。処分費用を下げるには複数業者で相見積もりするのが基本です。
不用品の処分、相場と比べていますか?
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